日本社会で急速に進む高齢者の「望まない孤独・孤立」の現状。
どのような関わりが必要なのか。

記事をご覧いただき、ありがとうございます。高齢者の孤立・孤独の解消を目指すNPO法人ソンリッサの萩原涼平と申します。今回は「高齢者の孤立や孤独の現状、そしてどのような関わりが必要なのか」について記事を書きました。また、当法人のサービスTayoryを通して、孤立や孤独という状態から、笑顔に変わっていくのか、ということもお伝えできればと思います。

高齢者の現状について

一人暮らし高齢者のうち、4割は 2、3日に1回以下

地域の人間関係の希薄化・孤立化や昨今のコロナウイルスの影響により、高齢者は外出しづらく、籠りがちな状況です。そのため、社会との接点を持ちにくい状況です。 内閣府の調査によると日本の一人暮らし高齢者のうち、4 割は 2、3 日に 1 回以下と報告されています。

一人暮らし高齢者男性、6 人に 1 人が月に 2 回以下

人とのつながりが希薄な高齢者には、話し相手がいませんし、気にかけてくれる人がいません。人とコミュニケーションをとりたい、つながりたい、と考えている高齢者であっても居場所がなく、孤立・孤独に陥っている ケースが急増しています。孤独・孤立は、認知機能の低下や認知症へのリスクを高めること、 ADL の低下など多くの健康問題を引き起こします。

なぜ高齢者は孤立し、孤独感を抱えてしまうのか?

高齢者が孤立してしまうタイミングは様々です。大きな環境の変化や突発的な出来事だけでなく、老化などから来る生活のしにくさ、移動のしにくさから、徐々に篭りがちになるかたもいます。きっかけは小さい出来事(グランドゴル フに参加するのが億劫になり、休んだ。コロナにより外出が怖くなった、)である場合が多く、 それによって、時間が経っていく過程で少しずつ問題が大きくなり、孤立・孤独になっていきます。

こういった加齢から来る暮らしにくさと大きなライフイベント(配偶者の死、役割の喪失、免許の返納、居場所の 閉鎖、コロナウイルスの影響による規制など)さまざまな要因が絡み合って、 孤立・孤独に陥っていきます。
それに加え、家族との関係性も孤立を深める大きな要因です。遠く離れていたり、あまり会う機会がない方も多くいます。高齢者の心理として、家族や自分の子供に迷惑をかけたくないという思いが強く、我慢したり現状を仕方がないと諦めて耐え忍ぶ方が多いです。

孤立する高齢者の一番の課題は何か?

孤立することで生じる一番の課題は「意欲の低下」と「選択肢の減少」

やりがいをもって社会に参加する意欲がだんだんと低下し、日中こもりがちになり、ひとりぼっちで生活していくとさらに意欲が低下する、というスパイラルになります。本人の認知機能はしっかりとしているので、周りの家族などからは大丈夫だと思われていることが多く、本人も家族も自覚のないまま孤立状態が長引きます。そのようになると、行動すること自体が減少していき、役割・居場所が減少していき、社会参加の選択肢が急激に減ってしまいます。

孤立する高齢者に対するサービスの選択肢がない。

介護サービスを利用する段階、もしくは利用中(要支援から要介護2までを想定)に、社会参加する手段と意欲を失った高齢者を支援するサービスはまだまだ少ないのが現状です。サロンや見守り活動などはありますが、本人が能動的に選択するための多様性はあまりありません。

また、介護サービスについても、本人の状態によってある程度カテゴライズされたサービスが多く、深刻な生活課題の解決が優先され、個々人の価値観に寄り添った細やかなサービスは提供しにくいのが現状です。
今まで日常的に自分の好きなことや趣味、気の合う人と楽しんでいた方にとっては、 選択肢の少ない現状に落胆します。

高齢者の望みは何か

自らが望む環境で生活を続け、 社会に貢献したい。

老後、自らが望む環境で生活を続け、 長い間培った経験を通して社会に貢献し、生きがいのある人生を送りたいというのは、高齢者の切実な願いです。
一人暮らし高齢者が本来、そういった状況で一番望んでいるのは、自分の楽しみや、生きがいの 部分や、社会的な役割(貢献感)です。だれかと自然な形でコミュニケーションを取ることで想い を尊重して、日々の日常を彩ることです。

孤独な高齢者の事例1「一人暮らし高齢者」

免許を返納して、暮らしが一気に代わり、日常の本人に関係する部分はヘルパーにお願いする が、それまでできていた日常の楽しみや趣味、コミュニケーションの部分が一気に少なくなり、 本人も現状を考えて、諦めて、意欲低下が進んでいきます。

人とのつながりが希薄な高齢者は、何日も人と会えません。配偶者に先だたれ、いつもひとり ぼっちです。体が思うように動かなくなったり、億劫にもなり、自分からも会いにいけない。会 いにきてくれる人や気にかけてくれる人もいないから、ぼっとテレビをみたり、天井をみて過ご す。そんな代わり映えのない生活を毎日過ごしています。一人で誰ともコミュニケーションを取ら ないと、不安になったり、ネガティブなことを考えたりと意欲もなくなっていきます。
何かをやってみたい、という気持ちも薄れ、どうせ出来ない、願っても変わらないと諦めていき ます。そのような生活が長くなると最終的にはそのような状態に慣れて、のぞみも持たなくなって いきます。

孤独な高齢者の事例2「同居家族がいる一人暮らし高齢者の孤立」

家族と同居していると当たり前ですが、独居高齢者には当てはまらないため、一人暮らし高齢者として認識されません(制度も使えない場合も)。
同居家族が子供世代の場合、日中は働いている場合も多く、日中は一人で過ごします。朝早くか ら夜遅くまで働いている場合は家族とのコミュニケーションもあまりないです。
また、子供世代との関係性が良好でない場合もあり、家族に遠慮して、心苦しく、迷惑をかけな いことを第一に生活している方もいます。同居家族がいるけれども孤立している高齢者の数はたく さんいます。

孤独な高齢者の事例3「問題がなさそうだけれども孤立・孤独のケース」

一見、なんの問題もなさそうに見える高齢者の孤独がすごく多いと感じています。配偶者に先 立たれたり、今まで所属していたコミュニティから離れたりした場合でも、自分の身の回りの生 活や認知機能もしっかりとしているため、受け答えはしっかりとしています。また、機転も聞き、 我慢強く、対人関係も上手にこなすため、一般的な支援者(地域包括、民生委員など)からは、 問題ないという認識になります。 

一般的な支援者にとっての支援が必要な人は、ゴミ屋敷だったり、近隣との関係性が悪かった り、受け答えがチグハグだったりするような方々に対して、孤立や孤独と認識して支援することが 多いです。 一人暮らしの高齢者で、車の運転が可能な人もよくいます。一見孤立はしていなそうですが、毎日 一人でご飯を食べていたり、日中ほとんど誰とも話さない方もいます。
支援者からは問題がないと思われていても、日中だれとも会わずに一人で暮らしているような方 も多く、問題意識も持たれなくなっていきます。本人も少しずつ意欲低下が進んでいきます。

問題がなさそうだけれども孤立・孤独になる高齢者の方は行政の主催する地域サロンや、自治会 の活動などにはほとんど参加しません。その理由に自分の感性や経験とは合わない、地域のしが らみが嫌だったり、地域活動に興味が湧かない、地域サロンに参加する一般的な高齢者と話が合わないと感じる方も多いです。

本質的にどのような関わりが必要なのか?

まずは、下記のデータを引用して、どのような視点が大切なのかを明確にしてから、どのようなサービスや支援が必要なのかを書いていきます。
私たちが健康でより長く生きていくために最も重要なのは、「社会とのつながり」です。「社会 とのつながり」が寿命へ与える影響力は、喫煙や過度の飲酒、運動不足や肥満よりも大きいと言 われています。

社会とのつながりが長生きの最も大きい因子である。

私たちが健康でより長く生きていくために最も重要なのは、「社会とのつながり」です。「社会 とのつながり」が寿命へ与える影響力は、喫煙や過度の飲酒、運動不足や肥満よりも大きいと言 われています。

社会的孤立によって死亡率は29%増加する。

社会的孤立や孤独感は死亡率を 30%も高めることを示した研究結果*も あります。 *「アメリカ、ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルト・ランスタッド教授らの研究結果」

社会とのつながりは、認知症リスクを最大46%軽減する

「社会とのつながり」や「生きがい」があるだけで、高齢者は健康寿命が伸び、要介護のリスク低下、認知症 リスクも最大46%軽減することもわかっています。

前項の「なぜ高齢者は孤立し、孤独感を抱えてしまうのか?」でもお伝えした通り、高齢者が孤独・孤立を感じるのは、その人に対する周囲からの興味・関心がなくなることが大きな要因と考えられます。そして、自分自身への関心も薄らいできて、孤立化が深刻化していきます。

このような「望まない孤独・孤立」を改善するために最も必要なことは、その方の想いや状況に関心を寄せながら、暮らしをサポートしてくれる人が身近にいることです。

優しいつながりをつくる

周囲から関心の目を向けられる機会を失った高齢者が、だれかとコミュニケーションをとることで、自分の楽しみや生きがい、想いをくみ取ってもらう機会を再び得ることができます(図のレバレッジポイント)。そのコミュニケーションを意図的ながらも自然な形で行い、「やさしいつながり」をつくりだすことができるとソンリッサでは考えています。

また日々の生きがいや社会との接点を自然な形で作っていくには、関わるスタッフの傾聴力、その人と対等に関わり、思いを言葉だけなく、表情や仕草などから汲み取るスキルなども必要になってきます。また社会資源と言われる、地域のサークルや居場所、NPOなどとのネットワークなども必要になってきます。

Tayory(タヨリー)を通して高齢者の孤立・孤独を笑顔に変える

笑顔でつながる見守りサービスTayory

Tayoryは、まごのような世代と一緒に会話をしながら、お困りごとを解決するサービスです。楽しいコミュニケーションを通して日々の役割や生きがいに繋げます。会話後は、ご家族様に日常の様子などをレポートでご報告します。

Tayoryの4つの特徴

①介護・福祉の専門家も揃う「まごマネージャー」が定期的に関わります。
②ご本人の興味・関心を最大限に尊重、地域コミュニティへのつなぎ役になります。
③ご用の代行や付き添いも気軽にお任せください。
④細かなご要望も、安心してご相談いただけるサポート体制をご用意しています。

Tayoryを通して実現したいこと

私たちは、要支援前や要支援などの高齢者の方々、ひとりひとりの想いを大切にし、その方の生 きがいや役割に繋げ、その方にとっての「支え」や社会・人との「繋がり」となりたいと思って います。そうすることで、健康寿命を伸ばし、本人の想いを幸せに繋ぐお手伝いを行います。

また、安心して交流する場や、日常の繋がり作りのお手伝いも地域の担い手だけでなく、企業や多様な世代などが地 域の一員として、社会課題に関心を持って関わることのできる温かくて優しい社会を目指します。 また、引きこもりがちな高齢者にとっては、ひとりひとりの背景や想いを大切にしながら多様な 主体が関わることを通して、誰もが一人で抱えずに、自分の幸せや役割につながることのできる社 会を目指します。

Tayoryの将来像

Tayoryのサービスが発展した場合に、私たちコーディネーターの蓄積する多数の利用者の方の個 性や趣味、やりたいことの情報が多くなります。またフォーマル・インフォーマルの社会資源の情 報蓄積が多くなります。その場合に2つのことが実施できます。
1つ目は、利用者の方の住まいや、興味・関心から、その方への相性の良い社会資源の検索がで きるデータベースを構築して、よりその人との相性の良い社会資源につながることが出来るサポー トを当法人で実施できるようになります。
2つ目は、利用者同士をコーディネーターが仲介役になり、マッチングします。その結果、支援す る・されるをわけずに孤立していた人同士が相互的に元気になり、生きがいや役割を持てるよう なサービスに育てます。その結果、たくさんのコミュニティも創出されます。 「ひとりで抱えずに、優しいつながりが溢れる社会をつくる」というビジョンの実現にも近づく と考えています。
最終的に、Tayoryのサービスを通して、引きこもりがちな、支えられる側と認識されていた高齢 者自身が地域社会を担う存在となり、地域コミュニティの活性化や、持続化に貢献できるような 地域作りができるような社会を目指します。

記事を書いてみての所感とこれからについて

お読みいただき、ありがとうございます!ソンリッサはまだまだこれからの法人です。共感して応援してくださる方々と一つ一つ着実に積み重ねている最中です。この記事を最後まで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、間違いなく「ご縁」だと思います。高齢者の孤立・孤独の解決、そしてひとりで抱えずに優しいつながりがあふれる社会の実現のために、お力添えをいただけますと有り難いです。今後ともよろしくお願い致します。
NPO法人ソンリッサ 代表理事 萩原涼平